ベル   北野勇作


 なっ、嘘じゃなかったろ。そんな嘘ついてどうすんだ、って話よ。いや、撤去するとこ見てただろうが。なのに、これだよ。撤去しても撤去しても、こうやって戻ってきやがんの。いや、幻覚とか幽霊とか、そういうんじゃないな。ちゃんとさわれるし。うん、そりゃ撤去できるくらいだからな。いやあ、掛かるかなあ。どうなんだろ。なんなら掛けてみるか? はは、テレカって。そんなもん、今どき誰が持ってんだよ。十円玉でいいんだ。えっ、そっかあ、最近のやつはもうそんなことも知らないんだな。あ、もうじきだな。うん、いつもだいたいこのくらいの時間。いやあ、出ない出ない。そんなの出れるかよっ。なんなら出てみっか? ほらな、やっぱり。そりゃ怖いよな。おれも怖い。ああ、けっこうしつこく鳴り続けるぞ。もちろん誰も出ないけどな。ま、せっかくだから聞いてけよ。だって、知らないだろ、公衆電話がどんな音で鳴るのかなんて。





北野勇作
SFとか書いてます。

大喜利に参加させてもらいます。